持続可能な社会への挑戦、ロボット人材づくり(上)
2023国際ロボット展(iREX2023)のテーマは、「ロボティクスがもたらす持続可能な社会」。より良い持続可能な社会の構築には、若い世代のアイデアや実行力が欠かせない。生産労働人口減少や脱炭素化の着実な進展のための技術開発など、社会課題が表面化し、こうした課題解決の糸口として、新しい発想とチャレンジを必要としている。(上)と(中)では、日本独自の教育システムでこれまでに多くのエンジニアを輩出してきた高等専門学校(高専、KOSEN)人材のiREX2023での活動を振り返る。また、(下)では、ロボット活用の可能性をコンテスト形式で発表した「ロボットアイデア甲子園」などを紹介する。
高専生自らが発表、ロボット活用の最前線
高専生がステージに立って、高専での学びの魅力や、ロボット制御の授業の様子などユニークな発表の舞台となっていたのは、エプソン販売/セイコーエプソンのブース。最終日の2日、沖縄高専の専攻科機械システム工学コース2年の学生4人が、自分達で作ったプレゼン資料を使いながら、身近な動きをロボットに動作させるプログラム制作、治具制作の様子や、エプソンの力覚センサーの活用などを説明した。
プレゼンでは、トップバッターで登場した宮平泰良さん(21)が、沖縄高専の学びの様子などを魅力たっぷりに紹介。続いた、佐久川泰聡さん(22)、兼久勇斗さん(22)、當間誉朗さん(22)はそれぞれ、先輩達の研究だった書道、ジェンガ倒し、そして自分達が研究したけん玉をロボットに動作させてみる、という構成で、プログラム作成の様子や治具制作の様子など動画を交えて臨場感を出しながら説明した。若者たちのみずみずしいプレゼンや、普段なかなか聞くことのない高専での授業の様子の発表に、多くの来場者が足を止めていた。
エプソングループと沖縄高専は数年前からロボット関連の授業での協力など共同で取り組んできた経緯がある。今回のiREXでは、流量計メーカーである東京計装(東京都港区)の生産子会社、沖縄東京計装(沖縄県うるま市)で生産設備として導入されたエプソン製6軸ロボットと力覚センサー活用の自動ネジ締め装置を披露しており、その開発に沖縄高専の教員も関わっていたというつながりもある。ブースでは高専生たちが、このネジ締め装置の技術説明員としても活躍した。
4人はそれぞれ就職が決まり卒業後はエンジニアとして活動していくが、この一連のプログラムで学んだことはとても大きな経験となったようだ。プレゼン終了後に話しを聞くと、「けん玉の実証で、力覚センサーにぶつからないよう板を設置し実験を行った」といった技術面での工夫のほか、「資料作成に動画をたくさん入れて、わかりやすくなるように心がけた」「リハーサルであまりうまくしゃべれなかったが、本番はしゃべれて良かった」といった大勢の前でプレゼンした感想とともに、ほっと息をついた。
エプソン販売のエンジニアリング営業推進部MSMD課の江尻征太郎課長は、「手探りしながら、高専とのつながりをポイントごとに深めていきたい。実際の現場で必要とされているロボットの活用など実践的な内容を授業で取り入れやすいよう、先生達もサポートしていきたい」と強調する。若い時から技能を身につけた高専出身エンジニアはロボットに関わる企業にとって要であり、彼らの採用と就職後の活躍後押しがますます重要になっている。
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